
#997に乗っていないので、仮想の”空冷997”は完全にイメージの世界である。現実の997は想像するに、硬質で、スムーズで、パワフルで、トルキー。軽く、しかし剛性感あふれる操作性。ベンツが2世代目でコストコンシャスをものにしたように、ポルシェも2世代目の997でものにしているはず。乗ってみたくなりました(^^)。
一昨日、昨日とつづいた仮想の空冷911のお話、最終回です。
もう一つの未来3
ここまでをまとめると、仮想の新型空冷911は、997カレラ4のワイドボディを標準として、エンジンフードのエアインテークを拡大し、リアバンパー下に997ターボ同様のエアアウトレットを設ける(996カレラ4Sの様になりましょうか)。そのRS版はヘッドのみ水冷とし、そのラジエター冷却のためリアフェンダーに997ターボ同様のエアインテークが備わる。エアロはGT3のものとしましょう。そのターボ版の外観は997ターボと同じであり、わずかな差違は拡大されたエンジンフードのエアインテークのみ。
こうして出来上がった997に似た、しかし997よりも高価な仮想の新型空冷911と、997との違いは何でしょうか。サスペンションも一緒、997の進化の証たる電子デバイスもそっくり同じものを搭載しているとしたら。発生する最高出力も997と一緒、つまりパフォーマンスに選ぶところがなかったとしたら。両者の違いは、わずかに空冷か否かという一点にのみ収斂します。
つまり、空冷であったとしても997とほとんど同じで、しかしそれよりも喧しく熱いクルマとなっていた、ということになるのです。では、空冷であることの価値とは一体何でしょうか? すでに水冷996と997の成功によってマーケットは答えを出しています。つまり911は、2+2のRRでさえあれば空冷である必要はない、と。別の言い方をすると空冷であることには何らマーケティング上の価値は見いだせず、ノイズや熱、上昇した価格を勘案するなら空冷はむしろマイナス要素になる、と。誰しもパフォーマンスが同じならば、喧しく、熱く、高い、空冷エンジンを今更望みはしないのです。
私のようなタイプはそれでも空冷であることを支持するでしょう。しかし、それは圧倒的な少数派であり、ポルシェの新しいマーケティング上は、むしろ歓迎されざる人種となります。このように考えると997に似た空冷911というのは、技術的に成立し得ても、マーケティング上は成立し得ないことが分かります。従って、996とその進化版たる997は、901より続くポルシェ911の唯一正当なる後継者であり、正常進化の結果であり、その集大成であり、それ以外はあり得なかった、と結論づけることが出来ます。
私はこの考察によって997が少し好きになりました。それまではコストコンシャスな996のアップデート版、と捉えていたのですが、その実は993までの空冷ポルシェに比べて何ら劣るところはなく、確実に正常進化を果たしいることが分かったからです。そしてボクスターを含む996以外に911が、いやポルシェ社が生き残る選択肢は無かったということをあらためて確認しました。
それなので、この考察によって私の脳内に生じた997に似た空冷911は、そのディテールやフィール、サウンドに至るまで精密に描写され、もう一つのワインディングロードを駆け抜けます。夢のポルシェとして。そしてそのワインディングロードは、どこまで走っても決して現実と交わることはないのです。
もう一つの未来
もう一つの未来2

#やや装飾過多に見えるが、それは現在のトレンド。リアフェンダーのエアインテークより導入された空気は、リアタイヤの後ろ辺りにマウントされたインタークーラーをへて、リアバンパー下のインテークから排出される。もしも空冷であったら、これでエンジンを冷やしたいくらい? 写真は997ターボ
昨日の続きです。
もう一つの未来2
997に似た空冷の911に、かつてのレーシングカーポルシェ908のような空冷フラットエイトを搭載したらどうでしょうか? メリットとしては、気筒数が増えたことで価格レンジ上昇の言い訳が出来ること。そして排気量を上げられるために、将来的なパワーアップの余地を残す、といった辺りでしょうか。逆にデメリットは数え切れないほど出て来ます。エンジン長が伸びることと、重量の増加によるハンドリングへの悪影響。気筒数が増えることで熱コントロールが一層難しくなる。より大型の空冷ファンが必要になる。エンジン騒音の増加。大きくなったエンジンを収めるためにリアオーバーハングが伸び、リアデッキが高くなることによるプロポーションの問題。さらに上昇するコストなどなど。8気筒化はデメリットが多すぎるのです。
これらを考慮に入れると、911はフラットシックスのままで行かざるを得ない、というのが結論のようです。そこでパワーユニットは空冷フラットシックスを継承するとして、997への搭載をイメージしてみます。空冷エンジンの熱の問題を緩和するために、エンジン周りの空間を少しでも確保できる997カレラ4のワイドボディーを標準とします。そしてエンジンフード上のエアインテークを十分に拡大する必要があり、これによりリアビューが変化します。さらに以前書きましたように、エンジンフード上にはブロワを設置して冷却の補助として使用し、エンジン停止後は逆回転させて自然対流を促進させます。
エンジン下にはアンダーパネルを設置するため、積極的な熱気の排出と、993までのような渋滞時の熱の滞留を防ぐために997ターボ、996カレラ4Sのような、リアバンパー左右下にエアアウトレットを設けます。そしてアンダーパネルから導入された適切な空気流と負圧によって、ここから熱気を排出します。また走行風の得られない渋滞時には、ブロワが作動して強制的に熱気を排出することとします。このブロワは必要であればエンジン停止後にも作動することにします。
さらに、空冷ファンによるリフトの問題を避ける、あるいは空冷ファンをマイナスリフトに利用するために、車体底面から冷却エアを吸い込んでエンジンフード上に排出する、という逆向きの流れを検討する価値もあるかと思います。結局、砂や埃を舞上げる事が問題なのでしょうけれど。997ではラジエターが配置されたフロント左右には、大型のオイルクーラーをブロワ付きでマウントします。油温によって、全閉、右開左閉、左右開、左右開+ブロワといったコントロールとなりましょうか。センターのエアインテークはエアコンの熱交換機の位置としましょう。
さらなるハイパフォーマンスモデル、RSについてですが、959のように水冷ヘッドとしDOHC4バルブ化するのはいかがでしょう。その場合、ラジエターの設置が必要となりますが、997ターボの左右インタークーラーの位置にそのままラジエターをブロワ付きでマウントします。従って、リアフェンダー上にはターボのようなエアインテークが開口することとなります。
ターボについては水冷ヘッドとしなければ、そのまま996、997ターボと同様の位置にインタークーラーを設置します。ヘッドを水冷とした場合は、そのラジエターをフロントセンター位置のエアインテークにエアコンの熱交換機と共にブロワ付きで設置することとします。
長くなってしまったので
結論は明日へ
もう一つの未来
もう一つの未来3

#見紛う事なき911のプロポーション。このエンジンコンパートメントに空冷フラットシックスが搭載されていたとしたら、あなたはどう思われますか? 写真は997カレラ4S
もう一つの未来
私のような空冷エンジンが好きなタイプは、もしも、という空想を描かずにはいられません。絶対にあり得なかったと知りつつも、もしも。もしも、996が空冷エンジンで開発されていたとしたら。というもう一つの未来です。今日と明日の2回に分けてこの、空冷エンジンの新型911について考えてみたいと思います。よろしければお付き合い下さい。
90年代の中盤。4ドアモデルの開発中止、アメリカ市場での売れ行き低迷など、暗いニュースばかりだったポルシェが放った「スター」は、その後のポルシェ社の運命を変えました。スタディモデルとして登場するやいなや、世界中から「生産化」の大合唱を受けたボクスター。その生産が決定した時点で、911の空冷エンジンの命脈は事実上尽きました。タイプ996、次期ポルシェ911がエンジンもシャシーも刷新し、ボクスターと兄弟車となることは、ポルシェ社の文字通り社運をかけた決断であったのです
コストコンシャス。ポルシェは996でそのメーカーとしてのポリシーを一新します。トヨタのカイゼンを導入して工場全体の効率化を図り、プラットフォーム共用という、他のメーカーでは当たり前の、しかしポルシェとしては初めての合理化を取り入れます。アメリカ市場でのシェアを失いつつあったことと、4ドアの開発中止による痛手によって財政が逼迫していたポルシェは、Aピラーから前が外観まで含めてボクスターと911で一緒という、トヨタですらやらないような、なりふり構わない車種構成に出ます。
そのパワーユニットには、熱コントロール、ひいてはエミッションコントロールや、パワーコントロールを容易にするため、迷うことなく水冷エンジンが選ばれました。ドライサンプは巧妙なウェットサンプに、ボクスターとは排気量とディテールに差違を与えて共用のパワーユニットとすることで徹底した合理化を果たします。これらによってこの兄弟車、いや双子車は、1台といくらか分の開発費で二つのマーケットに”商品”を投入することが可能となりました。
一つはミアータ以来のオープンスポーツカー市場、もう一つは旧来の911のマーケット+アルファです。+アルファとは911から固有の商品的難しさ、よく言えばマニアック、悪く言えば非洗練の部分を取り除いた事による新しいユーザーを指します。つまり、夏場にミニスカートの女性がうっかりリアフェンダーによりかかって悲鳴を上げる、と言うような普通のクルマからは考えられない「非常識な部分」が取り除かれたと言うことです。
さて、このような成り立ちの996ですが、空冷のままという空想を描くにはいくつかの条件が必要となります。
1.エンジンもシャシーも刷新する
2.ボクスターは存在しなかったこととする
3.これまで以上にコストがかかる
4.そのために価格レンジが上級シフトする
そして、空冷911の信望者のようなマニアックな男がポルシェの全権を掌握する事も必要でしょう。ボクスターを無しとする理由は、空冷のままで成立するとは思えないからです。これらを踏まえた上で、新型911のアウトラインについて考えてみます。まず、現代的な衝突安全性を確保するためにボディの大型化はやむを得ないことであり、2+2のRRという基本的な構成も普遍です。その為に外観は996、997に似ます。新型空冷911は993からの進化ですので、ここでは997をイメージすることにします。
次にエンジンですが、空冷であることを前提に考えますと最大の問題は熱コントロールにあります。パワーに関してもエミッションに関しても、この熱コントロールが大前提となります。空冷のままでこれを解決するには各部に十分なコストを掛ける意外に方法はないように思います。言ってみればレーシングエンジンのような高価なパーツを惜しみなく投入する、ということです。パフォーマンスは6気筒のままで最大排気量が3.8リッターとした場合、993RSの300PSを踏まえると最終的に340〜360PSあたりが現実的な線となりましょうか。
問題は上昇した空冷エンジンのコストと開発費を、ボクスターが存在しないために911単一車種によって回収する必要があり、そのために911の価格レンジが上昇してしまうことです。仮に「素」の911が1400万円程度まで上がるとしましょう。V8フェラーリの価格上昇と比べても、特別上げすぎな感じはしませんが、問題は6気筒のままで価格に見合う価値を市場が感じてくれるか否かです。
それでは上昇した価格に見合う価値を与えるために、8気筒、つまり空冷のままでフラットエイトとするのはどうでしょうか?
以下明日へつづく
もう一つの未来2
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